健康を保ちダイエット効果もあるとされている糖質制限。しかし、間違ったやり方をしてしまうと、期待とは真逆に効果が現れ、返って健康を損ないかねません。
栄養素としての糖質の役割と糖質制限の概要について確認しながら、間違ったやり方が引き起こす弊害や、正しい方法について見ていきたいと思います。
栄養素としての糖質
糖質は本来、人間が生きていく上で不可欠なエネルギー確保に有用な栄養素です。とくに脳のエネルギー源として重要な役割を持つものと言えます。
糖質は消化分解されることにより、ブドウ糖に変化します。これが血液に含まれる血糖として、身体活動で消費されるエネルギー源となるわけです。エネルギー源としては他にも脂質が挙げられますが、脳に関してはブドウ糖のみが用いられます。
脳は臓器の中で最もエネルギーを消費する器官です。身体全体が消費するエネルギー総量のうち約20%分は脳活動によるものとされています。つまり糖質とは、全消費エネルギーの2割分は確保しておくべきものと考えられるわけです。
糖質制限とは
身体にとって無くてはならない糖質。しかし摂取しすぎることで余剰が生じると、脂肪分に変化して体内に蓄積され、健康に悪影響を及ぼす原因となってしまいます。身体に蓄積される脂肪分が多くなるとメタボリックシンドロームに陥り、糖尿病や高血圧といった生活習慣病へと悪化を辿ってしまいます。
また、血糖値が高い状態そのものも健康を害する要因となります。血糖は膵臓から分泌されるインスリンと反応することでエネルギーに変換され、消費されます。しかし血中のブドウ糖が多すぎると、エネルギーとして消費されない分がそのまま残り、身体中のあらゆる細胞組織を傷つけてしまう要因ともなります。
それを防ぐため、膵臓はフル活動でインスリンを分泌しようとします。しかしそのような状態が長く継続してしまうと膵臓が疲弊し、結果的に血液中に含まれるブドウ糖の割合を示す血糖値が高止まりしてしまうことになります。
そのようなメカニズムで生じる疾病が糖尿病です。
以上のような、健康悪化の対策の1つに位置付けられているのが糖質制限です。過剰な糖質摂取を控えることにより、血糖のコントロールと脂肪蓄積低減を図るわけです。また、脂肪が付くのを抑えるという点に着目し、ダイエット法としても確立されています。
間違った糖質制限と、そのデメリット
糖質制限とは、その名称の示す通り、あくまでも糖質摂取を「制限」するものであり、糖質摂取を完全に断つというものではありません。糖質を一切取らない、あるいは極端に減らすといった方法は、健康上弊害をもたらす危険性があります。
糖質とは、主に炭水化物に多く含まれます。そのため、糖質制限においては砂糖などの甘い食品のみならず、米飯・パン類・麺類などの主食やイモ類・根菜類などがその対象となります。しかしこれら炭水化物には糖類以外にも食物繊維が多く含まれます。食生活において炭水化物を断つことは、同時に食物繊維摂取量を大幅にダウンさせてしまうことを意味します。
食物繊維は腸内の善玉菌にとって餌に相当するものです。善玉菌は腸内環境を良好な状態に整える役割を果たしてくれる存在です。しかし食物繊維が枯渇すると善玉菌の働きが衰え、便秘などを引き起こす原因となってしまいます。
また糖質は、脂質と共に身体のエネルギー源であり、とくに脳においては必須な栄養素です。
その摂取量が極端に減少してしまうと、身体のエネルギー源が不足してしまうことになります。身体活動に用いられる力や体温などを保つ熱が充分に作り出されず、だるさや冷えなどの誘発に繋がってしまうでしょう。脳へのエネルギー供給も不足し、集中力が維持し辛くなるなどパフォーマンス低下の要因ともなります。
正しい糖質制限について
間違った糖質制限の例としては、主に以下のような点が挙げられます。
- 糖質摂取量をゼロに近い状態まで落としてしまう。
- 食事量全体を減らすことで、炭水化物のみならずタンパク質や脂肪なども不足してしまい、身体に必要な栄養素が全般的に不充分となってしまう。
これらを回避し、適正に行われる糖質制限はどのようなものなのか、確認していきたいと思います。
ます、必要な分の炭水化物を摂取することが重要です。運動量の少ない人についての一般的な糖質制限としては、成人女性270g、成人男性330gが1日に必要な摂取量とされています。
しかしそれは、糖尿病の度合いや、職業ごとの労働量によって変化するものであり、万人に共通する値ではありません。医療機関による栄養指導などで自分にとっての適正量を確認することがベストでしょう。
また、糖質の制限だけに頼らず、日常生活に運動を取り入れることが重要です。健康のための体質改善やダイエット効果を糖質制限のみで達成しようとするのは、間違った糖質制限に繋がりかねません。
安全かつ確実に効果を上げるには、運動が不可欠と言えるでしょう。とくに有効な方法として、有酸素運動と無酸素運動の併用が挙げられます。
有酸素運動とは、酸素を利用して脂肪を燃焼させエネルギーとする運動を意味します。時間を掛けて疲労感の少ない負荷を身体に加え続けるタイプであり、主にウォーキングやジョギングなどがそれに該当します。
無酸素運動とは、極めて短時間で大きな負荷を筋肉に加える運動を意味します。ポピュラーな無酸素運動としては筋トレが該当します。
筋肉が発達すると、それに伴って身体の基本的なカロリー消費量すなわち基礎代謝が向上します。普段の生活におけるカロリー消費量がアップするのに加え、有酸素運動の効果もより大きくなります。
また筋肉には、糖質から変化したグリコーゲンというエネルギーの基となる物質を貯蔵する機能があります。筋肉を発達させることで、血液中のブドウ糖をグリコーゲンとして吸収し、血糖値を下げる効果が期待できるわけです。
まとめ
以上のように、適正量の糖質は健康維持に欠かせないものであることを踏まえながら、間違った糖質制限の弊害と、正しい糖質制限方法として日常的な運動習慣が必須であることを確認してきました。
正しい生活習慣を軸とした糖質制限を行うことで、リスクを避けながら成果を上げていけるでしょう。